監修:琉球大学大学院医学研究科 腎泌尿器外科学講座 教授 猪口 淳一 先生

膀胱がんが疑われる症状と診断1-5)

膀胱がんの初期症状として、最も多いのが「血尿」です。 尿に血が混じって、赤や茶色になっていたら、泌尿器科医にご相談ください。

膀胱がんの早期には、自覚症状がなく、痛みを伴わない血尿がきっかけで診断に至ることが多いです。

膀胱がんの初期症状:血尿
尿の色が赤や茶色になっていて驚く男性のイラスト。膀胱がんの初期症状である血尿に気づいたシーン
  • 尿が赤や茶色になる血尿が多くみられます。
  • 痛みがない場合も多いです。
  • 尿の見た目ではわからず、尿検査をしてはじめて見つかる血尿もあります。
  • 血尿は毎回出るわけではなく、一度出た後、しばらく出ないことも あります。

頻尿、残尿感、排尿時の痛み などの症状がある場合もあります。

筋層非浸潤性膀胱がん(NMIBC)の症状 も参照ください。

気になる症状がある場合や、治療していても症状がよくならないときは
泌尿器科医にご相談ください。

医療機関を受診した後の流れをご紹介します.。
詳細は NMIBCの診断 を参照ください。

泌尿器科では、まず診察と問診をして、症状を確認します。

病院を受診する 60歳半ばの男性患者さんのイラスト

膀胱がんと似た症状が出るほかの病気があるので、それらと区別するための検査を行います(尿検査、超音波検査、レントゲン検査、膀胱鏡検査)

検査で膀胱がんが疑われた場合、がんの組織を切り取り(TURBT)、顕微鏡で詳しく調べます(病理検査)。
膀胱がんの再発リスクや、患者さんの希望・年齢を考慮して、治療方針を検討します。

臨床検査技師による病理検査のシーン。膀胱癌の診断に必要な病理検査について示す
膀胱がんは中高年に多く、特に男性に多いことが特徴です。
【1年間に、国内で新たに膀胱がんと診断される患者さん】
10万人あたり男性30.1人、女性9.4人(全国がん罹患データ:2016年~2021年)

膀胱のはたらき1-3)

膀胱は、骨盤のなかにある袋状の臓器です。
尿を一時的にためておき、ある程度の量になったら、体外に出す役割があります。

膀胱がんのほとんど(90%以上)が、膀胱の内側をおおっている粘膜(尿路上皮)にできる「尿路上皮がん」です。
がんの広がりと深さによって、2つのタイプに分けられます。
そのほか扁平上皮がん、腺がん、小細胞がんなどがあります。

  • 膀胱は尿の量によって筋肉が収縮し、ふくらんだり、縮んだりします。
  • 尿は腎臓でつくられて、腎盂、尿管を通って膀胱にたまり、尿道を通って体外に排出されます(この尿の通り道を「尿路」といいます) 。
  • 膀胱の内側は尿路上皮でおおわれています。
  • その外側は筋層と脂肪層でできています。
  • また、膀胱だけでなく、尿路の内側はほとんどが尿路上皮でおおわれています。

膀胱とその周囲の臓器

男性の泌尿器のイラスト(膀胱と、その周辺の臓器である腎臓、尿管、尿道について) 女性の泌尿器のイラスト(膀胱と、その周辺の臓器である腎臓、尿管、尿道について)
  1. 国立がん研究センターがん情報サービス 膀胱がん 膀胱がんについて https://ganjoho.jp/public/cancer/bladder/about.html (2025年6月閲覧)
  2. 日本泌尿器科学会編. 膀胱癌診療ガイドライン2019年版[増補版]. 医学図書出版, p7-20, 2023.
  3. 並木幹夫監修. 標準泌尿器科学 第10版. 医学書院, p8-23, 205-255, 2021.
  4. 国立がん研究センターがん情報サービス 膀胱がん 検査 https://ganjoho.jp/public/cancer/bladder/diagnosis.html (2025年6月閲覧)
  5. 国立がん研究センターがん情報サービス がん種別統計情報 膀胱 https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/21_bladder.html (2025年6月閲覧)