監修:琉球大学大学院医学研究科 腎泌尿器外科学講座 教授 猪口 淳一 先生

膀胱がんの再発・転移とは1,2)

治療によって消失したがんが再びあらわれることを「再発」、ほかの臓器やリンパ節にがんが見つかった場合を「転移」といいます。

膀胱がんの場合、「再発」の意味は 筋層非浸潤性膀胱がん筋層浸潤性膀胱がん で少し異なります。

膀胱がんの2つのタイプと「再発」
筋層非浸潤性 膀胱がん
(NMIBC)
  • NMIBCの初回治療では、TURBTによるがんの切除や、膀胱内注入療法が行われることが多いです。
  • そのため、NMIBCの「再発」は、膀胱内にがんが再びあらわれることを意味します。
  • 再発NMIBCの治療については 「筋層非浸潤性膀胱がん治療後のフォローアップ」をご参照ください。
筋層浸潤性 膀胱がん
(MIBC)
  • 遠隔転移のないMIBCでは、膀胱全摘除術が標準的な治療になります。
  • MIBCでは、膀胱があった場所や、膀胱の近くにある上部尿路、尿道などにがんができることを「再発」といいます。
膀胱がんの「転移」

  • がん細胞が、血液やリンパの流れに乗って、膀胱から離れたところにある臓器やリンパ節に移動して、そこにがんが見つかった場合を「(遠隔)転移」といいます。
  • NMIBC では転移は稀ですが、MIBCではリンパ節、肺、肝臓、骨などに転移がみつかることがあります。

再発・転移後の治療について1,2)

転移がある場合や、膀胱全摘除術後にがんが再発・転移した場合には、薬物療法を検討します。

*再発NMIBCの治療については 「筋層非浸潤性膀胱がん治療後のフォ ローアップ」をご参照ください。

  • 膀胱がんと診断された時点で転移がある場合(Ⅳ期:転移性膀胱がん)は、膀胱全摘除術は行わず、薬物療法を行います。
  • 膀胱全摘除術を行った後、がんの再発・転移が見つかった場合も、薬物療法を検討します。
  • 再発・転移後の薬物療法には、抗がん薬、免疫チェックポイント阻害薬、抗体薬物複合体などが使われます。
ベッドに座って薬物療法を受けている患者さんのイラスト
筋層浸潤性膀胱がんの治療選択:IV期
筋層浸潤性膀胱癌(IV期)の治療フローチャート。薬物療法の流れを示す

国立がん研究センターがん情報サービス 膀胱がん 治療 https://ganjoho.jp/public/cancer/bladder/treatment.html (2025年6月閲覧)

緩和ケアと支持療法2,3)

がんによる体や心の心配ごとに対する予防、治療、ケアを行います。

がんと診断されたときから、医療関係者やがん相談支援センターなどにご相談ください。

  • がんと診断されると気持ちが落ち込みますし、体や治療の心配、仕事や将来への不安などもあるかもしれません。こうした心と体のつらさをやわらげるために、緩和ケアを行います。
  • また、支持療法はがん自体の治療ではなく、がんに関連した症状やがん治療によって起こる副作用や後遺症などを予防したり、やわらげるための治療とケアのことです。
  • 痛みがあるときは鎮痛剤を使ったり、がんによる出血や骨転移による痛みをやわらげるために、放射線療法を行うことがあります。
  • 緩和ケアと支持療法は、がんと診断されたときから始めます。医師、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーなど、さまざまな専門分野の医療関係者がチームになって(緩和ケアチーム)、がん患者さんとご家族を支えます。
療養中の患者さんを支える医師、看護師、ご家族のイラスト
  1. 日本泌尿器科学会編. 膀胱癌診療ガイドライン2019年版[増補版]. 医学図書出版, p5, p117-125, 2023.
  2. 国立がん研究センターがん情報サービス 膀胱がん 治療 https://ganjoho.jp/public/cancer/bladder/treatment.html (2025年6月閲覧) 
  3. 国立がん研究センターがん情報サービス 膀胱がん 緩和ケア https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/relaxation/index.html (2025年6月閲覧)