監修:琉球大学大学院医学研究科 腎泌尿器外科学講座 教授 猪口 淳一 先生

筋層非浸潤性膀胱がん (NMIBC) の症状 1,2)

痛みを伴わない血尿がきっかけで診断に至ることが多いです。

膀胱がんの主な症状は、血尿、頻尿、排尿時の痛み、残尿感、切迫した尿意などですが、NMIBCでは症状がないこともあります。

  • NMIBCでは血尿が多くみられますが、痛みを伴わないことも多いです。
  • 血尿といっても、尿が赤や茶色になるものだけでなく、見た目ではわからず、尿検査をしてはじめて見つかる血尿もあります。
  • 血尿は毎回出るわけではなく、一度出た後、しばらく出ないこともあります。
尿の色が赤や茶色になっていて驚く男性のイラスト。膀胱がんの初期症状である血尿に気づいたシーン

なお、膀胱炎、尿路結石、前立腺肥大症なども、膀胱がんと似た症状が出ることがあります。
膀胱炎だと思って治療していても 、実は膀胱がんかもしれません。
気になる症状がある場合や、治療していても症状がよくならないときは、泌尿器科医にご相談ください。

NMIBCの診断1,2)

さまざまな検査を行い、がんが粘膜、粘膜下結合組織にとどまっていること、転移がないことなどを確認して、NMIBCと診断します。

まず、診察と問診をして、症状を確認します。
膀胱がんと似た症状が出るほかの病気があるので、それらと区別するための検査を行います。

尿検査
  • 尿潜血検査: 微量の出血があるか確認します。
  • 尿細胞診: 尿中の細胞を顕微鏡で観察します。
超音波検査
(エコー)
  • 体の表面に超音波が出る機器をあてて、膀胱や周りの臓器の様子を確認します。
レントゲン検査
  • 尿路結石などと区別するため、腎臓、尿管、膀胱のレントゲンを撮影します。
膀胱鏡検査
  • 尿道から細い内視鏡を入れて膀胱内を観察します。

さらに、TURBT (経尿道的膀胱腫瘍切除術) により採取した組織について、病理検査を行い、膀胱がんの診断を確定します。

TURBT
内視鏡「検査」と「治療」を兼ねた必須の手術
  • ライトと小型カメラ、電気メスがついた内視鏡を使う、治療を兼ねた検査です。
病理検査
  • がん細胞かどうか、がん細胞の性質、悪性度などを顕微鏡で詳しく調べて、病期やリスクを評価します。
臨床検査技師による病理検査のシーン。膀胱癌の診断に必要な病理検査について示す

NMIBCのリスク分類2,3)

がん病変の数や大きさ、広がり・深さなどを確認して、リスク分類をします。

リスク分類は、膀胱がんが再発したり、進展(増大・浸潤・転移)するリスクを予測するためのものです。リスクの程度に応じて、治療方針が変わってきます。

  • NMIBCは、がん病変の数や大きさ、深さ(深達度)、異型度、Tis[上皮内がん(CIS)]があるかなどによって、4つのリスクに分けられます。
  • 異型度は、がんの悪性度に関係しており、細胞の形や並び方が正常な細胞とどのくらい違っているかによって「低異型度」と「高異型度」の2つに分けます。また、軽度(G1)、中等度(G2)、高度(G3)の3つに分けることもあります。
NMIBCのリスク分類
低リスク群
下記のすべてを満たす場合
  • がん病変の数:膀胱内に1カ所のみ
  • はじめて膀胱がんができた(初発)
  • 大きさ:3cm未満
  • Ta (乳頭状非浸潤がん)
  • 低異型度
  • Tis[上皮内がん(CIS)] 併発なし
筋層非浸潤性膀胱癌の低リスクに分類される乳頭状非浸潤性がん(Ta)のイラスト
中リスク群
低リスク・高リスク以外
高リスク群
下記のいずれかを満たす場合
  • T1
  • 高異型度
  • Tis[上皮内がん(CIS) ] (併発も含む)
筋層非浸潤性膀胱癌の高リスク・超高リスクに分類されるT1とTis[上皮内がん(Cis)]のイラスト
超高リスク群
高リスク群のうち、下記に該当する場合
  • I T1 高異型度であり、以下のいずれかにあてはまるもの
    • Tis[上皮内がん(CIS)] の併発
    • がん病変が複数、膀胱がんが再発した、大きさが3cm以上 のいずれか
    • 通常の尿路上皮がんとは異なる形や性質を示すがん、または、リンパ管もしくは静脈に浸潤したがん
  • II BCG膀胱内注入療法 でも消失しない高異型度腫瘍、
  • もしくはBCG治療後12ヵ月以内のNMIBC/ Tis[上皮内がん(CIS)] の再発

日本泌尿器科学会編.膀胱癌診療ガイドライン 2019年版[増補版].2023年,医学図書出版.を参考に作成

もっと詳しく知りたい方へ:異型度とリスク分類

日本のガイドライン(上表)では、低異型度は低リスク群、高異型度は高リスク群/超高リスク群に分類されますが、海外のガイドラインでは、低異型度やG1、G2であっても、高リスク群に分類されることがあります4)
※日本のガイドラインを参考にするのが基本です。

  1. 国立がん研究センターがん情報サービス 膀胱がん  膀胱がんについて https://ganjoho.jp/public/cancer/bladder/about.html (2025年6月閲覧) 
  2. 日本泌尿器科学会編. 膀胱癌診療ガイドライン 2019 年版[増補版]. 医学図書出版, p15-20, p27-37, 2023.
  3. 国立がん研究センターがん情報サービス 膀胱がん 治療 https://ganjoho.jp/public/cancer/bladder/treatment.html (2025年6月閲覧) 
  4. EAU Guidelines on Non-muscle-invasive Bladder Cancer.2024.  Uroweb https://uroweb.org/guidelines/non-muscle-invasive-bladder-cancer (2025年6月閲覧)