監修:琉球大学大学院医学研究科 腎泌尿器外科学講座 教授 猪口 淳一 先生

筋層非浸潤性膀胱がん (NMIBC) の治療選択1,2)

検査を兼ねた治療法であるTURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)を行い、再発リスクを確認して、追加の治療を検討します。

TURBTで採取した組織を詳しく調べて、NMIBCと診断された場合には、再発リスクや患者さんの希望・年齢を考慮して、その後の治療を検討します。

  • NMIBCには再発・進展のリスクがあります。初回のTURBTの後は、患者さんのリスクに応じて膀胱内注入療法を行い、再発・進展を予防します。
  • 上皮内がん(CIS) 以外の高リスクの患者さんには、2回目のTURBTを行うことがあります。
NMIBCの治療選択
筋層非浸潤性膀胱癌(0期、I期)の治療フローチャート。低リスク~超高リスクに分けて、膀胱内注入療法、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)などの治療選択肢を示す

国立がん研究センターがん情報サービス 膀胱がん 治療 https://ganjoho.jp/public/cancer/bladder/treatment.html (2025年6月閲覧)

TURBT1,2)

尿道から内視鏡を挿入し、電気メスでがんを切除します。

  • TURBTは、ライトと小型カメラ、電気メスがついた細い内視鏡を尿道から膀胱内に挿入し、腫瘍を切除することで、がんであるかの検査を行うと同時に、完全な切除を目指す治療法(内視鏡手術)です。全身麻酔または腰椎麻酔をかけて行います。
  • 上皮内がん(CIS)は、がんが尿路上皮内で平たく広がっています。このCISを見つけやすくするため、蛍光膀胱鏡を使った光力学的診断(PDD)などを併用することがあります。
TURBTの方法
経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)のイラスト。尿道から内視鏡に挿入し、電気メスで膀胱癌を切除することを示す
  • TURBTを行った後、出血(血尿)、頻尿、排尿時の痛み、発熱などが起こることがありますが、1~2週間程度で治療前と同様の日常生活に戻れます。

膀胱内注入療法1,2)

TURBTの後、がんの再発・進展を予防する目的で行います。

尿道からカテーテルを挿入し、膀胱内に抗がん薬やBCGを注入する薬物療法です。

抗がん薬
  • NMIBCの低リスク、および一部の中リスクの患者さんが対象です。
  • リスクによって注入の回数は異なります。
BCG
(ウシ型弱毒結核菌)*
  • がんに対する免疫力を高める作用があります。
  • NMIBCの高リスク、および一部の中リスクの患者さんが対象です。
  • BCG導入療法:TURBT後に複数回(例:1週間毎に6〜8回)注入します。
  • BCG維持療法:導入療法が終わった後、リスクに応じてBCG療法を1〜3年間続けることがあります。
  • BCGとは、結核の予防ワクチンの通称で、このワクチンを開発したフランスの研究者の名前がつけられた菌(Bacille Calmette-Guerin:カルメット・ゲラン菌)の頭文字です。膀胱内注入療法では、カルメット・ゲラン菌Tokyo株によって作られたお薬を使用します。
膀胱内注入療法の方法
膀胱内注入療法(抗がん薬またはBCG)のイラスト

膀胱内にお薬(抗がん薬またはBCG)を注入します。

さらに現在、より良い医療を目指して、新しい治療薬の有効性や安全性を調べる「臨床試験」が行われています
※臨床試験に関心がある場合は、担当医にご相談ください。

  1. 日本泌尿器科学会編. 膀胱癌診療ガイドライン2019年版[増補版]. 医学図書出版, p18, p27-55, 2023.
  2. 国立がん研究センターがん情報サービス 膀胱がん 治療 https://ganjoho.jp/public/cancer/bladder/treatment.html (2025年6月閲覧)