私は、61歳のときに新型コロナウイルス感染症にかかりました。回復後に自分でも分かる血尿が出て、病院を受診したところ「おそらく膀胱がんなので、ご家族を呼べますか」と言われ、娘と一緒に詳しい説明を受けました。
実は私、告知のときは動揺しませんでした。膀胱がんになった人は周りにいませんでしたし、がんの全容を知らなかったからです。
診断から2~3週間後には、初回の経尿道的膀胱腫瘍切除術(けいにょうどうてきぼうこうしゅようせつじょじゅつ、TURBT)を受けました。すぐに治療をしてくださり、ありがたく思っています。
初回治療以降、3ヵ月に1度の検査で再発がみつかれば、がんを取り除く治療(TURBT)を行いました。「治療は内視鏡手術だし、すぐ退院できる」、最初はそう考えていましたし、受診後に近隣の飲食店に立ち寄り、食べ歩きをするのも楽しみの一つでした。
ただ、1年で2回も再発したことには驚きました。私は自営業で父親の介護もあり、再発による治療は身体的・経済的に影響するので、再発の方が初めてがんと告知されたときよりも落ち込みましたね。
医師にBCG治療を勧められましたが、娘が別の医療機関を探してくれて、「これまでとは違う治療があるかもしれない」と思い、意見を聞きに行くことにしました。
転院先で実際に行ったのは、前医で勧められた治療でした。
2ヵ月間に6回行ったのですが、BCGを膀胱に投与した後、膀胱に薬液を行き渡らせるために一定時間経つと体位を次から次へ変えていくステップがあり、このような治療もあるのかと驚きました。治療は副作用や季節的な体調の影響などにより治療 中断と再開を繰り返しました。最後の治療中断の10ヵ月後にがんが再発したのですが、聞いたときはショックでした。
病院を変えたこと自体は、様々なことが理解できて良かったです。特に、診断を受けた病院で何度も再発したときは「病院のせいではないか」という不信感が少し芽生えましたが、そうではないことがよく分かりました。今は診断してくれた病院の主治医に感謝しかありません。
私の個人的な考えですが、膀胱全摘術を受けることになると、今の生活が制限されてしまうのではないかと感じています。私の好きな温泉旅行や父の介護などを長くできるようにするためにも、頑張って治療を続けていきたいと思います。
以前は、病気について知ることに抵抗感がありました。でも、今は「同じ病気の患者さんと、治療などについて情報交換をして、今後の参考にするのもいいかな」と思い始めています。2つの病院で治療をしましたが、どちらも入院したとき、膀胱がんの女性がおらず、心細い思いをしたことも
影響しているかもしれません。
初めてのがんの告知時に同席してくれて、いつも私を支えてくれている娘には感謝しています。ただ、私ががんになったことで、娘の生活も変わりました。患者である私以上に食材や飲み物など多岐にわたり勉強し、調べて届けてくれます。娘には感謝しながらも「昔のままで、気楽に構えてもらっていいんだよ。私は食べ歩きとか楽しみを見つけながら治療に向き合っている」ということを伝えたいですね。